現れなかった

金曜日の 待ち合わせ

 

 毎週の日課になっていた デート

 先週 コロナへの危機感を持ちたいと

 会うのをを控えたいと 思います 

 一方的に告げられて

 それに返事を しないまま 一週間

 

 途中 ドアノブで 気持ちをつなげたいので LINEもして

 職場から同僚と楽しそうに帰る姿

 連れだって ・・・ 

 何度も 見かけた 

 

 ハグさんにとっては

 告げたことで 相手に伝わったことにすでになっていて

 それで 了解を得たことに・・・・ 

 

 敢えて 返事は 出来なかった

 しなかった

 踏み込んだ LINEが欲しくて

 待った

 すれ違って いるのかもしれないが

 待った

 

 今日も待った

 ひょっとして 「車にいますか?」

 と 現われはしないかと 定刻に仕事を切り上げて 待った

 車でまったり していると

 外から 男性の話し声が聞こえて

 見ると 同僚と話しながら 帰っていくハグさん

 その姿を見送った

 

 今日は このまま帰れない・・

 桜の下で 時を過ごしたい

 気持ちを 落ち着かせるために・・

 

 それだけの 関係だった

 あの日までは 必要とされていて

 その日を 過ぎたら ただの人になって

 確かに 笑わなくなり 距離を置くようになり

 コロナをきっかけにして その位置を確かなものに

 計算済みの コロナ

 

 物語は 最終章に差し掛かって

 距離を 置く 

 自然に 離れて 

 会う機会がなければ 

 気持ちは 離れて

 次第に 薄くなって 

 やがて 消えていく

 陽炎のように

 

 何もなかったように

 嶋が 語りかける

 「最初から なにもなかったほうが・・・」

 この 一年の 想い出と歩みは

 ハグさんがすべてだったから

 

 ハグさんは 中学の時の友人に似て

 雰囲気と言い 話し方と言い

 その時を 思い出させる

 春の 暖かい日 海岸まで散歩して

 語り合った 日々

 転校でいなくなった 

 その 温かさを 思い出す

 

 傍に置いたスマホのバイブレーションに

 ひょっとして と 

 自分が 情けない

 ただ それぐらい 不思議な人

 切れないのかなあ ・・・

 いっそ 遠くに離れようかと

 真剣に 想う